若者が集うアートなカルティエと言われるマレ地区。
近くまで来る際には必ず食べたいのがファラフェル。中東料理で、ヒヨコ豆を揚げた小さめのコロッケ、揚げたナスに、レタスやキュウリなどの生野菜を薄いピタパンにはさみ、さっぱりしたヨーグルトベースの酸味あるソースと、お好みでピリ辛ソースをかけた、いわゆるビーガンピタサンドである。
パリでは珍しいたっぷり生野菜 ボリューム満点
中でも特に有名なのが、日本人向け観光ガイドブックでも紹介されているようで日本人観光客も時々見かけるが8~9割は地元人と思われる客層でいつも行列ができている「L’As du Fallafel(ラスデュファラフェル)」。
📍34 rue des Rosiers 75004 Paris
(参考)L’As du Fallafelオフィシャルインスタ https://www.instagram.com/lasdufallafel/
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正面もお隣もファラフェル屋さんという驚きの激戦区で一番人気と言われている。と、言われているのに、正面もお隣の店もそれなりに常に人は入っていて、「世界一のファラフェル」「最もおいしいファラフェル」というそれぞれキャッチコピーで、仲良く繁盛しているから、いい意味で人の評価に流されない個人主義の国だなと、そんなところが微笑ましい。
ところで「欧米人は絶対に行列を作らない」という話は日本ではよく聞くのだが、パリ市内に行くと、期間限定の美術展(無料開放日なら尚更!) から、ラーメン屋でも、何ならマルシェの中でも、現地人も観光客も一緒に行列をしっかり作っているのをよく見るけれどなあ…と思う。
確かにメトロの乗車時に、山手線のラッシュ時のような行列は絶対にできないのだけれど、恐らくその自由な待機状態からでも乗車に支障はないというのが大多数の感性で、それで機能しているという結果の慣習なので、彼らにとって行列の必要がある際にはその限りではないようだ。“無駄なことはしないけれど、必要と思えばちゃんとする、でもそれは自分で状況判断するから”という民族性が特徴的に思うのだが、あくまで個人的な感想だけれど。
さてコロナ禍では、日本人のお辞儀挨拶を始めとする文化的なソーシャルディスタンスや、帰宅したら靴を脱ぎ、手洗いうがい、人によっては部屋着に着替える…など、結果的に今回の新型ウイルスの感染を予防する清潔な慣習がフランスのメディアで度々取り上げられていた(日本よりもっとウイルス感染の抑制に成功していたと思われる台湾でも韓国でもなく「日本の文化」を度々取り上げていた)。
例えば”人にうつさないためにマスクをする”という日本的な(東アジア的?な)集団社会の考え方の紹介は、行き過ぎたと時に指摘されていた近年の欧州における超個人主義が見直されるきっかけとなるのだろうか。他方、日本では日本企業の縦型社会における、例えば不要な接待や不要な出社文化などを見直す機会ともなって、実はお互いの文化的な特徴は少しずつ歩み寄るような形となるのだろうか。
今後はまた分からないが、少なくともコロナ禍においては、世界は世界を21世紀始まって以来、最も物理的に遠く感じさせた一方で、心理的には少し近づけたのかも知れない。
そうそう、ファラフェル屋さんは、コロナ前からキャッシュレス社会のパリでも珍しい現金のみ扱いなのでユーロの現金手持ちが必須である。
さらにプラスチックの使い捨て容器やカトラリー、小分けケチャップなどを近年見かけにくくなった、エコ意識が日本より大分進んでいるパリでは珍しく、ここでは黙っていてもビニール袋にさっと入れて紙ナプキンもつけて持たしてくれる。もしフリット(フレンチフライ)を買えば小分けのケチャップとマスタードも入れてくれるのだ。エコの重要さはわかってはいるものの過剰包装と便利なグッズ慣れした日本人には得も言われぬ安心感があり、さらには旅行客にとってもありがたい。
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昨年、コロナウイルス感染防止政策としてレストランの店内営業が1年以上に渡って政府から禁止されていたパリの街で、唯一許可されたテイクアウト営業のために、またウイルス感染防止のため、使い捨て容器の文化に逆戻りした、というニュースを何度か読んだ。
ファラフェル屋さんは元々メインだったテイクアウト形態で、きっとこの苦境も耐え抜いてくれていることだろう。
違う文化の中に根付いた、別の国の食文化という雑種的な強さは、苦境にも強く、お財布に優しく、そしておいしい。元来は異文化だったファラフェルは、パリの地に根付いた今では、フランスの一般市民の生命力の強さを象徴しているようで興味深い。
ああ、早く食べに行ける日が待ち遠しい。