珈琲派、紅茶派

フランス語で「カフェ」とは、喫茶店のことであり、同時にun café(1杯のコーヒー)を意味する単語だ。同じ喫茶店を意味する言葉が日本語では、”喫”と”茶”の字が入るのに対して、フランス語では“コーヒー(珈琲)”そのものを意味する単語という訳である。

それゆえ、それぞれの喫茶とは、日本では「ちょっと一服」とも言われるように少し煙草をふかしながら茶を啜る場から始まり、フランスではコーヒーをテラスなどで嗜む場から始まったのかな、などと想像したりする。

フランスの一般的なカフェでは今もコーヒーが主流と言ってよいだろう。そのコーヒーとはエスプレッソが基本だが、フランスのそれは、イタリアの酸の効いたエスプレッソに比べれば若干マイルドな印象がある。

Café(カフェ) エスプレッソコーヒー 

Café crème(カフェ・クレーム) カフェオレ 

Café arongé(カフェ・アロンジェ)または Café long(カフェ・ロング) アメリカンコーヒーにあたるが、日本のドリップコーヒーくらいの濃さのイメージ

以上は、だいたいどこのカフェにもあるメニューで、さらに店によって日本でウインナーコーヒーと呼ばれているCafé viennois(カフェ・ヴィエノワ)など様々あったりする。

一方、お茶となると、庶民的な古くからのカフェでは選択肢は少ないことが多く、パリの中心の話題店やいわゆる高級店ほどいろいろなお茶やハーブティー、最近ではノンアルカクテルのようなドリンクなど様々に選べる印象がある。

Thé(テ)茶 ※テ、だけだと主に紅茶を指すため、テ、の後にベール(緑)、マント(ミント)などつけてお茶の種類を表現

Infusions(アンフュージョン) ハーブティー ※ヨーロッパ人は体質的にカフェインに敏感な人が日本人より多く、スーパーなどでもノンカフェインティーの需要は高い

そして夏にはメニューにないかもしれないが、フランスのカフェ文化で忘れてはいけないのが、ホットチョコレートとホットワイン。

Chocolat choud(ショコラ・ショー) ホットチョコレート

Vin chaud(ヴァン・ショー) ホットワイン  

ショコラ・ショーが有名な老舗カフェ、Angelina(アンジェリーナ)では、お客さん達がショコラショーに名物のモンブランを合わせて平然と食べているのをよく見かける。もちろんどちらも最高においしいのだが、モンブランには砂糖を入れない紅茶かコーヒーを合わせたくなる自分には、この二つを一緒に合わせるとさすがに糖分の過剰摂取でちょっと頭痛がするのだが、いやはやフランス人には甘党が多いのである。店内は観光客も多いのだが、地元民にもこういうクラシックな組み合わせは普遍的人気なのである。

さて、ホットチョコレートやホットワインの季節になると、街中の屋台では紙コップで販売している。これを飲みながらマイナスの気温のクリスマスマーケットを歩くのもまた、お洒落なカフェの店内で味わうホットチョコレートやホットワインともまた違った冬の楽しみ方の一つである。

ところで、フランスで飲むコーヒーは確かに日本で飲むそれと少し違って深みを強く感じることが多い。深煎り、エスプレッソ、というのが前提なので、日本で好まれる酸味とのバランスもとれたフレッシュな香りのコーヒーとの趣向の違いかなとも思う。

しかし正直に言うと、日本の軟質の天然水で入れたコーヒーはかなりおいしい。コーヒーにはそれなりにこだわりがあり、日々ミネラルウォーターでハンドドリップで淹れているので、それに十分満足しているのもあるかもしれないが、しばらくフランスに行けないからといって、フランス現地のコーヒーが飲みたくてたまらなくなったことは一度もない。

むしろ、フランス現地で必ず購入して帰国するのは、実は紅茶の方だ。日本にも支店があるが、種類の豊富さや現地でしか取り扱いのないフレーバー、大量に買うには現地が安いことから、時にスーツケースの片側半分を埋めてしまうお気に入りのお茶がMARIAGE FRÈRES(マリアージュ・フレール)。

金額だけで言えば1箱あたり1,000円ほどの差額ではあるが、現地の店の雰囲気も好きなのだ。こういったお茶専門店などは特に時には店員さんと話しながら購入するものが、店員さんと話すことがそもそも得意ではない性格のため、汗を大量にかきながら、これらを手に入れる達成感もあるのかも知れない。

LaduréeとPierre Herméのお茶も混ざる…
こちらはSAKURAティー(緑茶)風味のサブレ(クッキー)
Mariage Frères Le Marais(マリアージュ・フレール マレ本店)では、ティーサロン併設で、見た目にも美しい、お茶にマリアージュさせたランチが食べられる

Mariage Frères Le Marais(マリアージュ・フレール マレ本店)   📍30 rue du Bourg Tibourg 75004 Paris

これら戦利品を大量に抱えて帰国し、ブルーティー(烏龍茶など半発酵茶)、ホワイトティー(弱発酵茶)、ジャスミンティー、緑茶、ルイボスティー、紅茶、とベースも様々に香りも千差万別のめくるめくお茶を、日本の誇るおいしい軟水ミネラルウォーターで入れるのが至福の贅沢で、趣味といってもいいかもしれない。

そう、たぶん、フランスは硬水とミネラル分ゆえにワインがおいしい地なのだ。すばらしい香りの伝統技術で取り揃えられたフランスのコーヒーや紅茶には、日本の軟質の水を合わせることが、個人的には最高の日仏Mariage(マリアージュ/創業者の苗字だが、フランス語で結婚の意味でもある)だと密かに確信している。

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