フランス、肉食について

フランスでは牛肉を生で食べることができる。人気のメニューは「タルタル」という、いわゆるユッケのような生牛肉のたたきで、カフェやレストランの定番だ。なんでも、牛肉の流通経路が日本より、直接的で新鮮なまま肉を食べることができるからだ…といつか誰かから聞いた。専門的な詳細は調べていないのでその根拠は正しく述べられないのだが、とにかくフランスが酪農大国であるのは確かなためか、酪農や畜産の食材も健康的で新鮮でおいしいと、直感的に感じることは多い。

街中の肉を専門的に扱う店でもなさそうに見えるカフェでも、タルタルは頻繁に提供されているけれど、それでお腹を壊したという話は聞かないのは、やはり新鮮だからだろう、いやフランス人の胃腸の強さか、一緒に合わせるワインで消毒効果か。

タルタルもフリット(フレンチフライ)は必須

フランスは、近年肉食が減少している欧米諸国文化の中では、ビーガン主義の人間は比較的少なく、肉を好む人はまだ多いと思われる。というのは、もちろん完全なビーガンも一定数いるし、ペスカトリアンと呼ばれる魚介と非肉製品のみを食べる友人も知っているし、完全なビーガンではないが選択肢として可能であれば非肉製品を食す「フレキシトリアン」なるものが多いそうで、ともかく様々。おそらく現在の日本国内と比べると、ビーガンに関連するこういった食の主義は日常生活でも不便のない選択肢として既に複数あるのは確かな様だが、そういった中においては、肉食を前面に出して好む人もまだ多いという印象なのである。

国際会議の運営業務の際に、参加者への食事リクエストに対して、ビーガンやハラル、グルテンフリーといったいわゆるリクエストではなく「アレルギーではないがナスが嫌い」などの個人の好き嫌いまでを記載してきたのは、フランス人だったなと思い出す(もちろんそれがフランス人の一般的な傾向と言えるほどの母数データは持ちえていなく、食に主張の強いフランス人らしいなと微笑ましく思った個人の経験のエピソードとして)。その際は、国際会議に出席する大臣やその同伴者クラスの各国での国際会議慣れした人々が、定型の質問の枠を超えても伝えておくべきとの判断ならばと、実はナスはその会議期間の全メニューから除外された(食材に「ない」ことを確認しただけなので、幸いにして元々利用予定なかったのかもしれない)。

和牛の魅力…

欧米の、特にZ世代などにとっては、日本のバブル世代が仲間内におすすめレストランの共有としてFacebookにアップしてしまいそうな、高級和牛が鉄板の上で脂を溶かしながら焼けるシズル動画などは、悪趣味で前近代的と受け取られるだろうという話を聞いて、自分は若者世代ではないのだと痛烈なジェネレーションギャップを感じた。

確かに環境問題から、植物性の代替え肉の人気も高いことは知っている。大豆肉などなかなかおいしい時もあるし、少しずつシフトすべき部分もあるだろう。A5和牛の脂に魅了された経験がなければ、敢えて手を出さなくてもいいという意味も、わかる。

しかし若者世代ではない我々は残念ながら、自分でお金を稼ぎ始めてからというもの、それを何に使うと言えばちょっとした美食の贅沢をレストランで楽しむ肉食万歳文化に長年足を突っ込んでしまったがゆえに、たまには肉を、そして肉に合わせてワインという、Z世代から見たら恐らく悪趣味な“前近代的美食”を、悲しいかな、まだ体が時々欲してしまうのだ。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です